さて、これは非常に専門的で実用的なスリッターの操作に関する質問です。フィルムの厚さに応じて張力を調整することは、スリット工程の核心であり、スリット後のコイルの品質(端面の整頓度、フィルムロールの締まり具合、シワの有無、引張変形など)に直接影響します。
以下では、フィルムの厚さに応じて張力を調整する方法を、原理、調整戦略、実践手順、注意事項の 4 つの側面から詳しく説明します。
1. 基本原理: 厚さが張力に影響するのはなぜですか?
フィルムの張力制御は、本質的には、伸張プロセス中に材料の弾性変形を制御し、塑性変形(つまり、不可逆的な伸張)を回避することです。
• フィルム(BOPP、CPP、PETなど、12μm未満)
◦ 特性: 引張強度が低く、剛性が乏しく、伸びたり壊れたりしやすい。
◦ 張力要件:張力は低く抑えてください。張力が高すぎるとフィルムが過度に伸び、分子配向の変化、印刷パターンの変形、さらにはフィルムの直接的な破断につながる可能性があります。また、巻き付けがきつすぎると「硬直」状態になり、使用中に緩めるのが困難になり、「腱破裂」などの現象が発生します。
• 厚手フィルム(PE、CPE、50μm以上のアルミ箔複合フィルムなど)
◦ 特徴: 引張強度が高く、剛性に優れ、伸びにくい。
◦ 張力要件:比較的大きな張力が必要です。張力が小さすぎると、スリット工程でフィルムが緩んでずれ、巻きムラ、“巻き癖”、“菊模様”などの現象が発生し、コイルが柔らかくなり、後工程での巻き戻しが困難になります。
簡単にまとめると、厚さが薄いほど張力は小さくなり、厚さが厚いほど張力を適切に高めることができます。
2. 調整戦略:緊張システムの構成
スリッター機の張力は、通常、次の 2 つの主な部分に分けられます。
1. 巻き出し張力:原料マスターロールの巻き出し速度を制御し、逆抵抗モーメントを提供します。
2. 巻き取り張力: 完成したロールの巻き取り速度を制御し、正の牽引モーメントを提供します。
3. プロセス張力:巻き出しから巻き取りまでの間、ガイドローラー上を走行する材料の張力を指します。通常、安定性を維持するために、ダンサー(フローティングローラー)または張力センサーによって自動的に制御されます。
調整の核心は、巻き出しと巻き戻しの張力値を設定することであり、通常、巻き取り張力は巻き戻し張力よりわずかに大きくして、プロセス張力の安定性を確保します。
3. 実践的な手順とパラメータ設定方法
ステップ1:準備 - 基本的なパラメータを知る
設定する前に、次の点を知っておく必要があります。
• フィルム材質:PET、BOPP、PE、CPPなど、厚さが同じであっても張力値が異なります(PET必要張力>BOPP>PE)。
• フィルム厚さ:μm単位での正確な測定。
• スリット幅:幅が広いほど、必要な総張力が大きくなります。
• マスターロールと完成ロールの直径: 張力制御モード (通常はテーパー張力制御を使用) では、最大直径と最小直径を入力する必要があります。
ステップ2:初期パラメータ設定(基準値)
これは非常に重要な出発点です。以下は経験的な参考値です(単位:N/㎡またはkg/㎡、機器のユニットによって異なります)。機器や材料によって大きく異なるため、この表は初心者向けの参考値としてのみご利用ください。
フィルムの種類: | 厚さ範囲(μm) | 巻き戻し張力(N) | 収縮張力(N) | 述べる |
光学グレードPET | 12-25 | 10-25 | 15-30 | 張力精度は非常に高く、非常に小さくて安定している必要がある |
プレーンPET | 25-50 | 20-50 | 30-60 | |
ボップ | 15-30 | 15-35 | 20-45 | 伸びやすい、張力は大きすぎるよりも良い |
CPP/EP | 30-60 | 25-55 | 35-70 | |
の上 | 60-100 | 40-80 | 50-100 | |
厚膜/複合膜 | 100以上 | 60-150+ | 80-180+ | ロールの形状に応じて適宜増加可能 |
これらの値をどのように理解しますか?
たとえば、25μm BOPP フィルムをスリットする場合、巻き出し張力 20N、巻き取り張力 25N でテストマシンを起動できます。
ステップ3:微調整と観察 - コア実践リンク
初期パラメータを設定した後は、試し切りを行い、コイルの状態を観察しながら微調整を行う必要があります。まさにここがオペレーターのレベルが問われるところです。
• 問題: コイル(巻線)の端面が不均一
◦ 原因: 張力が弱すぎる、または張力が変動している。
◦ 調整:巻出し張力と巻取り張力をゆっくりと少しずつ上げていきます(例:2~5Nずつ)。空気圧が安定しているか、ガイドローラーが柔軟であるかを優先的に確認してください。
• 問題: コイルがきつすぎる(硬いコイル)、フィルムが伸びている
◦ 現象: フィルムロールが硬くなり、フィルムをスリットした後にサイズが長くなり、印刷パターンが変形します。
◦ 原因: 過度の緊張。
◦ 調整: 巻き出しと巻き戻しの張力をすぐに下げます。
• 問題: コイルがしわになっている
◦ 原因: 張力が強すぎてシワになっている場合や、張力が弱すぎてフィルムが緩んでシワになっている場合、または機器やブレードの平行度に問題がある場合があります。
◦ 調整: まず張力を微調整 (増加または減少) してみて、問題が解決しない場合は他の機械部品を確認します。
• 問題: コイルの「膨らんだリブ」(縁が盛り上がっている)
◦ 原因:フィルムの厚さが厚すぎるため、巻き取り時に局所的な圧力がかかり、膨らみが生じます。根本的な原因は過剰な張力であり、これが厚さの不均一性という欠陥を増幅させています。
◦ 調整:全体の張力を適切に下げます。それでも解決しない場合は、スリッターのテーパーテンション機能を有効にする必要があります。
ステップ4:高度な機能を使用する - テーパーテンション
高品質なコイルをスリット加工するための重要な技術です。
• 概要: 巻き取り径が大きくなるにつれて、張力は初期値から徐々に直線的に減少します。
• 理由:「巻きが硬い」ことや「内側が緩んで外側がきつい」ことを防ぎます。巻き取り張力が一定であれば、外側のフィルムはどんどんきつく締まり、大きな収縮力によって内側のフィルムが圧迫され、紙管にシワや変形が生じたり、紙管自体が圧迫されたりする可能性があります。
• 設定方法: 通常は開始張力とテーパースケール (例: 100% から 50%) を設定します。
◦ 厚膜:テーパーを小さく設定でき(100%から80%など)、減少量も小さくなります。
◦ フィルム: テーパを大きく設定し (100% から 50% など)、削減量を大きくします。
◦ フィルムが柔らかいほど (PE など)、テーパー比は大きくなります (張力の低下が速くなります)。
4. 黄金律と注意事項
1. 大きいより小さい: 不確実な状況では、張力を小さな値から徐々に増やす方が、大きな値から減らすよりも安全であり、材料の無駄を避けることができます。
2. 微調整の原則:調整範囲は毎回小さく(3〜5Nなど)、調整後はしばらく観察し、結果を急いで達成しないでください。
3. 記録!記録!記録!: 成功した各パラメータ(材質、厚さ、幅、張力値、テーパ値)を記録して、最も貴重な資産である独自の「パラメータ ライブラリ」を形成します。
4. 機器の状態チェック: テンション システムは、空気源、ブレーキ パッド、ダンサー ローラー、センサーなどのコンポーネントが良好な状態であることに依存します。応答性を確保するために定期的なメンテナンスが必要です。
5. 環境要因: 作業場の温度と湿度はフィルムの特性に影響を与える可能性があり (例: PE は冬は硬くなります)、季節によって同じパラメータを微調整する必要がある場合があります。
まとめ
フィルムの厚さに応じて張力を調整することは、「設定-観察-微調整」という動的なプロセスです。
1. 経験値を参考に、厚さと材質に基づいて初期パラメータを設定します。
2.コイルの端面、弾力性、表面状態を観察し、張力が適切かどうかを判断します。
3. 「大きな調整よりも小さな調整、微調整」の原則に従って最適化します。
4. テーパーテンション機能を活用して、コイリングの内部品質の問題を解決します。
5. 詳細な記録を作成し、実践経験を積み重ねます。
万能のパラメータというものは存在せず、最適なプロセスパラメータは、オペレータの材料特性と機械の性能に関する深い理解と、豊富な実践経験から生まれます。